水野家族法学を読む(4)「連載第1回のまとめノートとちょっと余談」
今週は、「第1回 日本家族法のルーツを考える」まとめノートと、ちょっとしたおまけを書いておきます。
まとめノート
1.はじめに
1-1.法学部の講義
「大学教育(あるいは少なくとも法学部教育)において最も重要なことは、教師の学問的世界を垣間見ることによって学生が感銘ないし感動を受ける可能性を、与えることである。どのようにすれば最も上手く自己の学問的世界を彼等に垣間見させることができるかを考えるのは、当の教師の責任であり、また権利でもある。そこにマニュアルはあり得ないし、況んやこの問題を制度的に解決する手立ても、本質的に言って、存在しない」
水野先生が在学していた当時の東大法学部の男女比 50対1
どうしても研究室に残りたいのなら一生結婚しないことを約束させられた友人も
水野先生は加藤一郎教授に受け入れてもらえる
1-2.民法の白地規定
財産法→民法の規定で解決が導かれた
家族法→結論を協議に委ねる(白地規定)が多い
家族法の難問中の難問
金銭紛争は答えの出る条文を書くことが可能。
家族法は、両親の平等や紛争解決ではなく子どもの福祉。
平成8年婚姻法改正要綱の策定時も、子の氏の決定方法で対立。
ドイツやフランスでも同様の問題があった。
⇒民法の決め方が平等であることと実態は別次元。
パリのバス
乗客は(窓を)開けたければ窓を開ける権利がある、ただし乗客のうちに開けたい者と閉めたい者がいる場合は、閉めておきたい者の権利が優先する(ルールが設定される)
日本
乗客は譲り合ってというマナーが掲示される程度
2.西欧法と日本法
ドイツ語(Recht)フランス語(Droit)・・・権利は、法が割り当てた配分であり、正義のために行使される
日本・・・わがままな自己主張?
村上淳一「自己の主張の実現によって社会秩序を形成しようという責任感が醸成されない」
水野「西欧民法を動かす前提となる法律家の存在を、日本社会はいまだに準備できていない」
日本人の法意識は?・・・川島武宜「日本人の法意識」再読
民法典編纂
「権利や義務や時効という翻訳語そのものを創り出すというところから始められた近代法の立法が、明治維新からわずか30年で成し遂げられたことは驚異的な偉業」
「明治民法立法過程の法典調査会議事録では、現在から見ても、非常に水準の高い議論が行われており、起草者たちの天才的な頭脳に圧倒される。日本の法学部では日本語を用いて講義が行われ、法の運用はすべて日本語で行われているが、それはアジア・アフリカ諸国では決して自明なことではない」
その一方、「無益の手続」として家庭内弱者を守るための公的介入の保障の多くの規定が削られていった。
3、日本法の文化的遺伝子
明治維新前、徳川日本の社会は、イエによって構築 ※明治民法の家制度と別
東洋法の伝統である律令(刑法・行政法)主体
→民法(市民法)を知らない社会(そうかな?)
お上は立ち会い、「内済」による解決
→「正義」は保障されない
現代の日本にも残っている
→信田さよ子「家族と国家は共謀する」再読
トム・ビンガム「The Rule of Law」
→法の支配の7つのルール
日本には、第2・第6が欠けている
4、戸籍制度と明治民法の家制度
戸籍は、現在に至るまで日本法を動かす基礎的なツール
明治初年は、牛馬の数すら記載
↓
急速に整備、1887年にほぼ完成をみる
戸籍は公開(昭和51年まで)原則で運用、身分証明だった
→国民の戸籍に対する意識が重いものに
当初は夫婦別氏(東洋法の伝統)
→家制度の創設で同氏に
江戸時代・・・家産はイエに帰属 明治・・・戸主に権限
相続法はフランス法を継受
「無益の手続」排除→家族法の究極の私事化
家族法は、戸籍の登録基準と相続を定める法に
ちょっと余談
今月、「水野家族法を読む」を勝手気ままに書き散らしておりますが、感想を。。。聞くのが怖い。。。
(2)(3)が難しい話に入ってしまったため、はじめて民法(家族法)を勉強しようと思った人は面食らったのではないでしょうか?(すみません)
オピニオンブログを書いて、noteも書いていると、たまーに聞かれるんですが、全国の法律専門家の皆さんも聞かれたことあったはず。
「おすすめの本ってありませんか?」
口が裂けても専門家などとは名乗れない私からしますと、先生方が薦める本は、全部難しすぎます。(かつては僕もそうでした)
”内田民法”とか断じて薦めてはいけないのです。
今ならまずここから薦めてみる
表紙に「30分で分かる」とか書いてある本が売れるんです。
司法試験で膨大な条文数に苦しんだ先生方には許しがたい表現でしょうが、表紙にある通り、「30分で分かっちゃう本」が結局は売れるのです。。。(2度言った)
じゃあ、次のステップ。もう少し入門書っぽい本を進めるとしたら?
ここで「有斐閣アルマ」とか思いついちゃう人はビジネスセンス0点。
キャッチ―な本を薦めよう
宅建、行政書士受ける人が読むロングセラーですが、私が学生のころから、「表紙がダサい」「持ち歩くのが恥ずかしい」とか散々な言われようでした。w
が、我ら法学部生は甘かった。
ビジネス感覚が完全に欠如していたことを認めざるを得ません。
売れる本て、こういう題名ですよね。
(わかーるシリーズとか図解雑学シリーズとかもそうですね。)
これでも表紙がダサいとか持ち歩くのが恥ずかしいだの、見栄ばかり気にする方もいらっしゃると予想するので、この本はどうでしょうか。
目的分かりやすいなー。この題名は売れるでしょう。
(第9版)とある通り、ロングセラー。
この本は中身もすごい良いと思いました。
分からない人、つまづいちゃう人に、分かってもらうためには、どう説明するかをすごく考えています。
いよいよ法学書来るか?と思うでしょ。
そうは問屋が卸さないんですよ。w
話し言葉主体の本を薦める
僕も大学受験時代に、予備校の集中講義シリーズ。秋山先生の数学のやつとかめっちゃ面白かったですけど、伊藤先生はよくわかってらっしゃると思います。
僕のかつての勤務先にぽこって置いてありました。w
営業担当者とかへの研修向けの素材に良いんですよ。
講義調の本はとっつきやすいですからね。
最近の法学書では窪田充見先生の本や大村敦志先生の基本民法シリーズはそうかな、と思います。
あとこれとか。
柴田さんは「一問一答」とか、学生が楽しく学べる教材を考えるのが上手い人だと思います。私が学生時代に、現役合格(機械式合格法)で話題になった方ですが、もともと「予備校講師なりたかった」とおっしゃるほどの教え魔なので、こういう仕事が好きなんでしょうね。
ちょっとアホっぽいキャラも嫌いではないw
いい加減に法学書の一冊くらいちゃんと薦めろ!と言われたら
いやー、そうっすねー。
ここを一番真剣に考えて、今午前3時なんですけどねー。
オチはナシで真面目に選書しました。
「法学書」を買うことに憧れるあなたが「お、やるね」と周りから思われる一冊。
学生より大人が読むと面白いと思います。
家族にまつわるいろんな社会問題のエピソードもふんだんに入っていますし、図解も多い。
講義調で読みやすくもある。
そして、理論的な説明も妥協がないです。
窪田先生がスタンダード(標準的な)学説かというと、うーんですが、僕、最近思うのですが、通説の本て買う必要ないと思います。
司法試験受けるようなレベルの子は、どこかで絶対教えてくれるんで。
シケタイでもCBOOKでも、スタンダードを丁寧に教えてくれる予備校本は充実しているじゃないですか。
基本書は、かつて「予備校本との両立」を目指していた時代(内田民法なんかそうですよね)がありますが、本来の「理論を考える面白さ」に原点回帰していいいんじゃないか、と思っています。
そうなると、だいぶ変わるような気がしまして、
憲法→芦部ではなく辻村
民法→内田、潮ではなく佐久間・平野
刑法→前田ではなく山口、大谷ではなく井田
会社法→神田ではなく弥永
民訴→伊藤ではなく藤田
刑訴→田口ではなく上口
みたいな選書もアリかも。。。(だいぶ異論出そうですが)
【次回予告】
4/28に発売される、
法学教室2021年5月号に掲載される水野先生の第2回連載記事のレビュー
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